【くちコミ情報】 「一人旅」に惹かれるあなたへ
正月に実家に帰省した際、本棚に並んでいる宮脇氏の文庫本を数冊持ち帰ってきた。本書に出会ったのは昭和59年。私が高校生の時である。この『時刻表2万キロ』を読み終わった後に、無性にローカル線に乗りたくなり、当時発売されたばかりだった、国鉄の「青春18切符」を購入し、全国のローカル線の旅に出発したことを思い出した。 昨日、既に黄ばんだ初版の本書を再び読み終えた。宮脇氏がいかに「鉄道旅」を愛し、偏狂ともいえる情熱をもって歯抜けのジグソーパズルとも言える未乗の全国各地のローカル線を乗りつぶしていったのか、同じように家庭を持ち、仕事に束縛される日々を送る年齢になって、あらためて彼の偉業に感嘆した。それは、TV番組でお膳立てされた、車窓風景・鉄道旅ではない、一人黙々と時刻表と取っ組み合いながら、自分の立てたプランのすばらしさに満悦してしまう旅である。 「一人旅」という言葉に、何か心を惹かれる方、是非読んでみてください。 「2万キロ」に最も純粋な宮脇さんを見た
この本のおもしろさは周知の通りで、それをいちいち述べる必要は全くないのだが、当時の安定した身分を捨ててまで宮脇さんはよくぞ書いてくれたな、とあらためて思う。若くはない。事の成否によっては元名編集者の信用までもが問われる。並々ならぬ決意を要したはずだ。一世一代の大勝負に打って出たと言っていいだろう。 p しかし、フトコロには秘蔵のテーマ「時刻表2万キロ」を温めている。危険を冒してでも世に問うてみたい、という衝動が心を突き動かしたに違いない。事実それだけの価値がこの本には存在する。 p 決断は正しかった。果たして「2万キロ」は大ブレイク、その後に陸続と発表された作品は我々ファンを魅了し、確固たる世界を築き上げたのだった。 p のちの作品の、相当に垢抜けした高級な文章と比較すれば「2万キロ」はこだわりが強くてやや未熟だ、との見方もあるようだが、私はむしろ趣味人らしい真っすぐで透明なアマチュアリズムをそこに感じるのであり、時間も労力も所持金も顧みず、純粋に趣味にのめり込む一途な姿が本書のさわやかな隠し味になっていると思う。 p もしかしたら「時刻表2万キロ」こそが本当に楽しんで書かれた唯一の作品だったのではなかろうか。それゆえに私は「2万キロ」に登場する、きわめて純粋な宮脇さんに親しみと安らぎを最も感じるのである。 p 列車に乗る。ふと、となりで静かに窓外を見ている紳士がいる。宮脇さんのそんな姿を偲びながら読んでみよう。 この作品は文学です。
題名を見て、この作品を単なる鉄道マニアの戯言と思って通り過ぎてしまうと大変残念である。 時刻表をたどって計画を立てるところはマニアならではという感もあるが、その辺に嫌味を感じないところが他の鉄道のライターとは大きく一線を画すところだ。 p 文学作品として鉄道マニア以外でも楽しく読めるのであるが、鉄道好きが読むと何気ないちょっとした一言が琴線に触れ、ニヤリとしてしまうのであった。 国鉄の恐ろしさ
1978年に発表され、日本ノンフィクション賞を受賞した作品。 それまで日の当たらない存在であった鉄道ファン、なかでも乗りつぶしファンを世間に認めさせた一冊として知られている。 国鉄の旅客路線の全てを乗りつぶすという奇特な体験を綴ったものだが、鉄道文学として最高級の水準に達している。目的なく鉄道に乗ること。厳密に言えば、鉄道に乗ることを目的として鉄道に乗る。この無目的さが良い。乗り慣れた車内を違った目で見るきっかけを与えてくれる。 しかし、処女作ということもあり、完成度の高さはもうひとつ。宮脇ワールドへの入り口となる作品ではあるが、代表作とするには欠点が目に付く。特に鉄道ファンとしてのオタクさが前面に出てしまっているのは残念であった。 宮脇氏の作品の素晴らしさとは
この作品は、2003年2月に惜しくも逝去なされた日本を代表する鉄道紀行作家、宮脇俊三氏の処女作である。 p 自分が初めて触れた宮脇作品でもあるが、読むやいなや「こんな本があったのか」と思わせられるほどのめり込んでいった。国鉄全線完乗を目指し、北海道から九州に至るまで日本各地を旅する。その多くは、白糠線・美幸線・小松島線・添田線・・・・・今やその殆どが廃止となっているローカル支線であり、だからこそ健在であった時代の「様子」が窺え、そういった「歴史的資料」としての面も「紀行文」に加えて楽しめるものである。宮脇氏の作品には、そういった「追加的価値」も多くうかがうことができる。さらに風景と列車内の様子を表した描写は、臨場感をかもし出してくれるほどであった。 p これに続く作品の「最長片道切符の旅」とあわせ、テレビ局の企画でもその形態の旅行が近頃取り上げられたが、それは両作品がよほど素晴らしかったことの表れといえるのではないだろうか。今から約30年前、まだ「国鉄」の分割民営化が取りざたされる前の時代の鉄道と日本の風土の様子を、ぜひ楽しんで欲しい。
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