【くちコミ情報】 朗読もある
ポール・オースターという、今最も油の乗っているユダヤ人作家と、これまた絶好調の翻訳家柴田元幸という組み合わせがいい。翻訳が間違っている、という指摘もあるが、ほうっておけばいい。「翻訳は意訳に限る」というのが国際人・現代人の真骨頂なのだから。気になるなら、オースター自身の朗読もある原文を読めばいいのだから。それにしても、アメリカ人にはいろんな人間がいるもんだ。特に「物」という章には、非常な経験、ありえない偶然、というのがいろいろ語られていて興味が尽きない。本当に、実話か?と思わず言ってしまいたいような事ばかりだが、ここは書いた本人を信じよう。日本人とのエピソードも何編かある。やはり、この前の戦争がらみが多いが・・・・ 「アメリカ」が語るノンフィクション・ストーリーにして、「アメリカの一庶民」が語るノンフィクション短編集
それぞれのストーリーは共通のテーマに沿って分類、層立てされている。動物にまつわるものから始まり、家族、戦争、愛、そして死にまで至る内容は、それぞれのストーリーを仕上げた個人は別人ではあれ、人生において起こりうるであろう様々なイベントを追体験するかのように構成されている。 その長さは見開きで2、4ページ分くらいのものがほとんど。まれに長いものもあれば1ページだけの短いものもある。美談の類の、いわゆる「良い話」もあれば、気まずい話題、惨めな話もある。喜劇もあればエッセイもあると、非常にバリエーションに飛んでいる。 また、それはアメリカ人、その全体としての代表や政府機関としての声、精神ではなく、アメリカ人自身の声、精神としても受け取れるものなのかもしれない。そしてそれは、We 2.0的文化で解釈するならば、当人達は決してそれを意識しているわけではないのだろうけれども、アメリカ人、もしくはその精神性に対する自分探しと解釈できるのかもしれない。 1冊で2通りの楽しみ方ができる非常に稀有な本と言える。 面白かったり、そうでもなかったり・・・
すごく面白い話とそうでもなかった話と極端だった。ただ、短編集なので分厚い割にはすらすら読めたし、「次はどんな話だ?」なんて期待を持って読むことが出来た。不思議なことをよく経験する私としては、読んだ後の感想は「この世の中に絶対科学で証明できないことが存在する」という確信だった。 180編の実話を収録。事実は小説を越えたのか?
アメリカの或るラジオ番組で、A短い話Bそして本当にあった話・・・という条件に該当するものを募ったところ、たくさんの応募があった。その中から選りすぐりの180編を「動物」「夢」「家族」「戦争」「死」などにカテゴライズしたものが本書である。1ページや2ページで終わるものが大半なのだけれど、エリザベス・ギルバートやジュンパ・ラヒリの優れた短篇小説を読んだときのような至福の読後感が味わえるものが数多くあった。さりげないスケッチが微笑ましいものもある。また何度読み返しても信じられないようなすごい話が豊富で、まさに「事実は小説よりも奇なり」だ。500ページを越える大書だが、軽量の工夫がされているようで意外に重たくないのもありがたかった。 いっぺんに全てを読むのはもったいない
「どうも肌合いが違うな…これなら2chの話をまとめた『思い出に残る食事』の方が100倍出来がいい」なんて思って読んでいるうちに「戦争」の章に集められた話には魅了された。 p ストレートフラッシュ同志のポーカー勝負に勝ち仲間たちから8000ドルを巻き上げた兵士が、直後に日本軍の戦闘機に爆撃されて死んでしまうという話。志願制となった日本上陸作戦への参加をひとり部隊でとりやめた兵士が、ハワイへ帰る途中、乗っていた輸送船が機雷で撃沈されて死んでしまうという話。16歳のドイツ少年兵が「朝から何も食べていない」と泣き出してオランダ人の主婦からポテトをもらう話。「『耐え難きを耐え』というヒロヒトのフレーズの主語は私たちだったのだ」と語り始める「1945年のクリスマス」。 p ちなみに「『耐え難きを耐え』という…」の原文はHi ohito meant us when he said, "We must ea the un ea a le"。 p 少しずつ読んでいきたい。