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   全集・選書 の売れ筋最新ランキング   [2009年01月07日]
2009年01月07日(水) 全集・選書の第1位は 『須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)』!
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カスタマーレビュー数:1

くちコミ情報
これから須賀敦子を読む人は、まずこの文庫版全集から
須賀敦子の文章は癖になる。たまたま「本に読まれて」を手に取る機会があって、その文章の美しさに惚れ込んでしまった。その文業が、すでに文庫版全集になっているとは……。 デビュー作「ミラノ 霧の風景」と第二作「コルシア書店の仲間たち」が1冊になって、単行本未収録の「旅のあいまに」も入っていて、お買い得。 これから須賀敦子を買って読もうという人は、当然、この本から手にすべきです。


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¥ 2,100(税込)
通常24時間以内に発送
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カスタマーレビュー数:4

くちコミ情報
塩野女史のベネツィアへの愛情がこの本の魅力です
私の敬愛する竹田青嗣氏によれば、世の中の価値観は「真・善・美」に集約されるという。 この考えが正しいのであれば、歴史の場合、「善・悪」の価値観で評価するのではなく「真・偽」の価値観で認識すべき「事象」のように思う。 「情」と「理」の対立軸でいうならば、「情」で評価するのではなく、「理」で評価すべきなのではということ。 塩野女史の著書を通読していると、彼女の歴史観というのは、、常に「善・悪」や「情」でなく、「真・偽」及び「理」の視点で認識しようとする姿勢があり、非常に気に入っている。 しかしながら、塩野女史は、「善・悪」で評価はしないものの、「好き・嫌い」で評価しているところは読み手も共感できるところだ。本人も言及している「カエサル」好きはともかく、「ヴェネツィア」に対する彼女の愛情はこの著書を読みながらひしひしと読者に伝わってくる。 下巻の394ページより、 「栄枯盛衰が歴史の理ならば、せめてこのヴェネツィアのように、優雅に衰えたいものである。そして、ヴェネツィアが優雅に衰えられたのは、ヴェネツィアの死が、病気や試練をいく度も克服してきた末に自然死を迎える人間の、死に似ていたからではないだろうか。」 あらゆる苦難を国民の団結と知恵で切り抜けてきたヴェネツィア。私はこの「第13話 ヴィヴァルディの世紀」の最後に記されたこの文章を繰り返し読みながら、すっかりヴェネツィアの虜になってしまった。
最盛期を迎えた国家が衰退に向かい滅亡するまで・・
ジェノヴァとの制海権争い、オスマントルコとの断続的な戦争を戦い抜くヴェネティアだが、時代はすでに大航海時代にはいっていた・・・。海運の衰えを工業や農業の発展で補い、18世紀にヴェネティア文化は爛熟に至った。同世紀末、ナポレオンのイタリア侵攻により同国の独立は終わりを告げる・・・。 p 「歴史家は、国の衰退はその国の国民の精神の衰微によるという。だが、なぜ衰微したかについては、われわれが納得できるような説明を与えてくれない。」 著者は、隆盛を極めたひとつの国家が終焉を迎えるまでを丹念に描いていく。こうも言う。 p 「少なくともヴェネティア史に関するかぎり、このような単に精神の衰微や堕落のみに立脚した論にどうしても賛同することができない。」 こうした視点で描かれる歴史は、前巻に増して、諫言・警句・教訓に富み、飽かせない。 「20世紀のわれわれは、君主制はすべからく悪である、という色めがねを外すことから始めなければならない。」 p 「社会の上下の流動が鈍り、貧富の差が固定化し、結局はその社会自体の持つヴァイタリティの減少につながる。こうなってはもはや、いかなる改革も、いかなる福祉対策も効果はない。」 「英雄待望論は、報われることなど期待できない犠牲を払う覚悟とは無縁な人々が、自己陶酔にひたるに役立つだけだからである。」 p 歴史に学ぶ、とは言い古された言葉だが、そうした知的好奇心を満足させてくれる名著。 「栄枯盛衰が歴史の理ならば、せめてこのヴェネティアのように、優雅に衰えたいものである。」 見事!
ヴェネツィアの興亡
ヴェネツィア共和国の誕生から成長、大発展までを描いた本。政治、文化、一般庶民の暮らしぶりまでさまざまなな側面を描いています。筆者の文章は読みやすく、その分量にもかかわらず、まったく読むスピードが落ちませんでした。歴史の紹介だけではなく、ヴェネチアに対する筆者の洞察も秀逸。数年ごとに読み返したくなります。また、この本を読んでからヴェネツィアへ旅行へ行くと旅行がとても豊かになります。
なるほど(下)
ん~~。正直言って戸惑ってしまった。この本の前半部分、これが同じ人が書いたものかと。著者がもっとも信頼していた編集者が物故したのは、みなさんご承知の通り。編集者が違うとこうも違うものかと。全編を流れる文章のリズムと「節」立てが、明らかに違うのである。しかも、文章が硬直しているのである。さすがに、150ページ過ぎたあたりからは、七生流に流れはじめるのではあるけれど。 この本は、いろいろな意味において、彼女の作家生活にとって大きな転機になっているのは、間違いない。彼女曰く「スペンシェラータ(気楽なとか、無責任なという意味)ではもはやなくなった、つまり大人になったということでしょう。」 まったく、なるほど、である。


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塩野 七生  
¥ 1,995(税込)
通常24時間以内に発送
ジャンル内ランキング:27576位  
カスタマーレビュー数:13

くちコミ情報
1000年の歴史を感じる名作
かつて地中海世界に燦然と君臨した都市国家、ヴェネチア共和国。その1000年余の歴史を丹念に追った傑作歴史文学。 フランク族の侵入から逃れた人々が、干潟に移住したのがヴェネチアの起源。以来、その歴史は、常にとどまることのない不断の努力によって支えられていた。 海運と交易をもって歴史に名乗りを上げた創成期。 海軍力をもって十字軍に参戦、コンスタンティノープルを占領し、ライバルのジェノヴァを抑えて地中海の制海権を握った成長期。 無敵の海軍で地中海を我が海とし、芸術の繁栄も極めたルネサンス期の全盛期。 新興国オスマン・トルコとの闘いに苦しみながらも、工業国家、そして農業国家へと構造転換することに成功した後期。 国家としては小さなものになりながらも、観光都市として最後まで輝き続けた晩期。 そして18世紀末、ナポレオンに占領される事で、国家は静かにその終わりを迎える。 本書の面白さは、国家をあたかも一つの人生のように眺め、国家体制や産業構造の変遷も含め、国自体を一つの人格としてトータルに描いている事。人間と同じように、国家における幼年期〜青年期〜中年期〜晩期がつまびらかに描写される。そしてその歴史は、素晴らしい人生がいつの時期も輝き続けるように、時代ごとに異なった輝きをもって、1000年の時を刻み続けた。 本書は人物本意のありがちな歴史本ではない。むしろ個人より組織というものが大事にされていたヴェネチア共和国を描くにあたっては、過剰な人物への思い入れは正確な描写の妨げとなる。国家自体を一つの人格として描くというこの手法、ヴェネチアを描写するのに最適な手法と感じさせられる。 本書を読んで、筆者塩野氏のヴェネチアへの限り無い愛情を感じると共に、かつてこのような奇跡のような国が存在したことを知って、自分自身へのかけがえのない財産となった。日本では知名度の低いヴェネチア共和国であるが、その歴史はまさに人間の可能性を感じさせられるたいへん素晴らしいものだ。もっと多くの人に知られてよい歴史だと思う。 本書は通算2回読んでいる。一回目は10年以上前に日本で、二回目はヴェネチア旅行の際に旅のおともとして。本書を読んでから、私もすっかりヴェネチアびいきである。 塩野氏の歴史文学では”ローマ人の物語”と並ぶ双璧だと思う。一生を共にしていけるような素晴らしい本に出会えた事に感謝して5点満点献上。
海と結ばれた栄光の都市国家千年の興亡史。ここから日本が学べることは。。。
以前に「文芸春秋」に、”有力者のえらんだ日本のわかいひとたちにおすすめの歴史書”、みたいな特集があり、トップ3にはいっていたのです。それで初めてよんだのですが。。。 日本とおなじように海洋国で、貿易により繁栄を築いた栄光の国、ヴェネツィアの興亡史。強烈におもしろく、一気に読ませていただきました。 フン族の王アッテイラの攻撃から都の形成、貿易の成功による経済大国としての繁栄、途中でレパントの海戦やコンスタンティノープルの攻防を含む十字軍の戦いのサブストーリイも魅力的で、そして政治・外交能力の低下とともに影響力が下降してついにせめ滅ぼされるまでの壮大な歴史絵巻。 ヴェネツィアの成功の歴史は実に、戦後から近年までの日本と酷似しているのです。国家の原動力は強力な経済の活気であり、そしてともに海洋国家で大海という天然の国境に守られていましたが、ともに同じ運命を歩みかねないのではないか。。。少々心配になります。 日本人の先輩たちがこのくにの未来を背負うこれからのかたがたにぜひよんでほしい、と選んだのは同感で、よくわかります。名著であり、星5つ、絶対のおすすめ歴史モノです。
ローマ人の物語シリーズが終わることを心配な方へ・その3
これまでこのレビュー・タイトルで、「神聖ローマ帝国」と「ビザンツ帝国」の本について書きましたが、ローマ人の物語シリーズが大団円を迎えた後、お薦めする作品の大本命は同じ作者による本作ということになるでしょう。残念ながら文庫本は品切れのようですが、私が持っている文庫本版で上下巻併せて千頁を超す大作。ゲルマン民族に追われ、撃退して独立を保ってから、ナポレオンに滅ぼされるまでの、ヴェネツィア共和国(いかに徹底して君主制を排除したかも丁寧に書かれています。)の悠久の千年の歴史は、必ずや読者を惹きつけてやまないでしょう。ヴェネツィアを中心に、ライヴァル国(例えば同じイタリアならジェノヴァ等の他の海洋国家、イタリア外ではビザンツ帝国やオスマン・トルコ)との抗争、他のイタリア都市国家や法王との集合離散など、イタリア千年の歴史を俯瞰するのに格好の本です。作者には「レパントの海戦」等、本書に取り上げられた1エピソードに焦点を合わせた一連の好著がありますが、まずは本書でマクロ的にヴェネツィアを中心とするイタリアの通史を抑えてから、個々のエピソードの本を読むとよいのではないでしょうか。聖地巡礼パック旅行やヴェネツィアの女たちといった章もあり、本書は当時の人々の生活に目を配ることも忘れていません。これだけ充実した内容でこの分量、一度読み始めるとまさに巻を置くこと能わず、読書の醍醐味を味わうことができるでしょう。
男勝りの筆致
塩野氏はイタリア史を描かすと右に出る者がいないほど優れていると思う。限られた文献から逞しい想像力を駆使して次々に歴史上のヒーローに命を吹き込んでいく。本書、ベネチア史についても例外ではないだろう。ただあえて心残りだったのは本書での女性の描き方だ。イスラムで奴隷として捕らわれハレムの女王になりあがり頭脳戦で宰相を陥れたチェチェリア・バッホについては肯定的だった。けれどトスカーナ大公メディチの妻は大公に愛され大公を意のままにできる立場にいながらまったくせずおしゃれに終始と作者は否定的。また1000年にわたるベネチア史上政治にかかわりあいを持った女性は二人しかいないと不満気に漏らす。塩野氏は男勝りの論理的筆致だ。でもひょっとすると歴史の中心人物の社会的成功は上手く描けても繊細な内面にはせまることのできないのではないかという気がした。そんなことを考えたりしながら読むと面白かった。
大国中国と対峙する日本の生き方に多大のヒントが!
 6月末大学のクラスメートでアドリア海・エーゲ海のクルーズに行くことになった。そのクルーズの出港・帰港地が共にベネチアであり、クルーズ終了後更に2日間ベネチア観光の日程をとっていることから、思い立って昔読んだ塩野七生女史の「海の都の物語―ヴェネチア共和国の一千年」を読み直そうと考えた。 p  十数年前に読んだ記憶があるが、細部は殆ど忘れていて、今回のクルーズの航路がヴェネチアが地中海の女王として、活躍した通商ルートと重なり合う為、興味は尽きなかった。是非ご一読をお勧める。    歴史としても面白いし、1000年に亘って繁栄を続けた統治機構を作り上げたプロセスなど、政治機構論的にもかつての政治学徒としても勉強になった。「ヴェネチア共和国は資源に恵まれなかった国である。資源に恵まれた陸地型の国家ならば、非効率の統治が続いても、それに耐えていかれる。古代ローマ帝国、ビザンチン帝国、トルコ帝国も、悪政が続いてもそれが帝国崩壊につながるには、長い長い歳月を要した。一方、資源に恵まれないヴェネチアのような国家には、失政は許されない。それはただちに、彼らの存亡につながってくるからである」との指摘は日本と中国との関係にもそのまま通用しそうな議論で、身に詰まされる思いを懐いた。


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世界最高峰のフルコース
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力作だとは思いますが...
しっかりした内容だし、力作だと思います。 一条天皇周辺の事について初めて読む人や、詳しい ことを知らなかった人には、目からうろこの情報も あると思います。 ただ、定子と彰子についての記述や著者の考えには 個人的にあまり共感できませんでした。 (元々、栄花物語は道長賛美の本だし...) たとえば、定子の生涯を綿密に調べて描いた秀作、 『たまゆらの宴』(斎藤雅子著)を読んでから こちらを読むと、違和感があります。 その時代の人が本当はどういう人だったのか、 研究や検証を重ねても、正確な所は誰にも断言 できませんが、読者も1つのテーマに関して 色々な本を読んで考える事が大事だと思います。
文学の時代
 一条天皇の時代が、清少納言と紫式部という古典を代表する人物の「枕草子」と「源氏物語」が書かれた時代であったことを知ることができます。  同じ天皇の中宮であった定子に使えた清少納言、彰子につかえた紫式部、それぞれの文学を生む安定した時代だったんだと思います。  今、生きる人にも共感できる人々の悩みや、今では理解できにくい怨霊封じなど、時代を映して見事です。  この描写力には、感心しました。意義深い1冊だと思います。
『栄花物語』を大胆に用いて、一条朝を描く
従来、あまり史料としては重んじられなかった『栄花物語』を、「人々の関係や微細な心理に深い関心を寄せていて、見逃せない独自の情報も多い」として、積極的に取り入れ、さらには『枕草子』『紫式部日記』『権記』『小右記』などを駆使し、最新の研究成果を基礎に、一条天皇と定子、彰子の関係を、生身の人間として丁寧に描いています。圧巻は、定子の遺児敦康親王に対する彰子の思いの分析で、本当に細やかに述べられています。 また、受領層出身の定子と皇族の血を引く彰子との出自から来る性格の違いの指摘も興味深く、それぞれのサロンの雰囲気の相違につながったことが理解されます。
完成された文体で人間像を描く
本書は、源氏物語成立史を縦糸に、紫式部が間近に見た天皇や后たち、藤原道長とその周辺の人々の姿を描き出したもの。各種の歴史資料や作品から、人間像を浮かび上がらせるその手法は見事で、専門外のものでも思わず引き込まれる魅力を備えている。また、宮廷女性の自立が一つの隠れた主題になっており、とくに父親道長への反発から劇的に成長していく一条天皇后・彰子についての記述からは、著者の共感が伝わってくる。さらに注目すべきなのは、簡潔かつ明晰でありながら、軟らかくリズムを備えたその文体で、研究者にしておくには惜しいほどの完成度である。文才と、冷静な中に情熱を秘めた観察眼。それは、おそらく紫式部にも通じ、紫式部への傾倒から身につけられたものでもあろう。こんな言い方が、著者の意に沿うかどうかは分からないが、これを機に文学史の語り部としての活動を続けてほしいものだと思う。四つ星としたのは、必ずや出るであろう次作に期待してのことで、十分、五つ星に値する。


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「楽園遊び」のかなしみ
文学の最先端はいま、南米にあるらしい。 欧米や日本ではよってたかって暴きつくされてしまった神秘や熱狂、地下ふかくに沈められたエネルギーが、かの土地にはまだ無限に残っているのかもしれない。 バルガス=リョサはペルー生まれの作家。 本書は、池上夏樹が個人編集した世界文学全集の2冊目に選ばれている。 パリをはなれ、楽園をもとめてはるかタヒチへ移り住んだ画家、ポール・ゴーギャン。 その祖母で、今でいう社会主義者の先駆となったフローラ・トリスタン。 ふたりの人生のクライマックスが、いくつかの章にわかれ、交互に語られる。 ゴーギャンはタヒチへ渡り、パリに戻り、ふたたび海を渡ってさらに奥地のマルキーズ諸島へ。 フローラは何かにとりつかれたようにフランスの町から町へ、労働組合の必要を説く演説をして回る。 並行する語りが交わることはないけれど、ふたつの物語は思わぬ地点で呼びかけあい、響きあい、次第にあるひとつのリズムを刻みはじめる。 その「リズム」に大きく影響しているのが、独特の文体。 いま、日本や欧米で書かれる小説のほとんどは、一人称もしくは三人称で語られるけれど、「楽園への道」は二人称、作家がゴーギャンやフローラに語りかけるかたちをとっている。 解説によると、著者は騎士道小説(「ドン・キホーテ」はそのパロディで有名)に影響を受けてこの文体を選択しているらしい。 ともあれ二人称の文体で、説教がましくならず小説を最後まで引っ張っていくには、高度な技術とセンスを要する。日本語でも、スペイン語でも同じだろう。 その上、最後まで途切れないすさまじい吸引力と、全体性。綿密で根気づよい取材にもとづく、圧倒的なリアリティ。 この作家にとって小説はただの娯楽でなく、政治であり、命がけの事業なのだろう。
楽園はどこにある
打ちのめされました。 うたい文句の「ポール・ゴーギャンと彼の祖母のたたかい」に何の疑いもなく読んでゆきました。南の島に渡ったポール、そしてフランスで戦う祖母。 彼らは強い。たぶん、我々日本人が彼らのメンタリティに敵うかどうかすらわからないほどに強い。 本書が21世紀になってから書かれた本だと知ったときはもっと打ちのめされた。こんな素晴らしい小説が60代のバルガス=リョサが書いたなんて。 タイトルこそ「楽園への道」(原題の直訳ではありません。念のため)ですが、果たして主人公二人に「楽園」はやってくるのか、まったくわからない。それだけならまだいい。フローラ・トリスタン(ゴーギャンの祖母)は、「楽園」もくそもなく、戦いながら若くして死んでしまった。ポール・ゴーギャンには、ひょっとしたら、「楽園」を感じられたかもしれないが。 私は、フローラ・トリスタンの報われない戦いと虚しい死に、徹底的に打ちのめされた。まさしく「正直者は馬鹿をみる」(フランスにこのようなことわざがあるかどうかはわかりませんが)がごとき死。 マリオ・バルガス=リョサはどこまでもクールだ。ゴーギャンの南の島での生活も、フローラの犬死がごとき生涯も、クールな視線で描いている。それがゆえ、私は徹底的に打ちのめされた。ペルー生まれの(60代の)バルガス=リョサにとっては、彼自身が経験したであろう、厳しい現実を、ただ書いただけなのである。 19世紀のフランスでも、やはり女性差別はあった。それを上っ面だけ書くのではなく、個人のたたかいとして、バルガス=リョサは書ききった。まるで19世紀のフランスに転生して、フローラにのりうつったがごとく。素晴らしい。 ゴーギャンの生涯だってそうだ。ゴーギャンは本を残したが、ただそれを読んだだけ、とは思えないほど、緻密な描写である。 絶対に購入して読んで、損をすることはない。そして打ちのめされて欲しい。かつて、クラッシュのヴォーカル、ジョー・ストラマーが言ったように、「今ある自由は、これまで人々が戦って得た自由なんだ。それを知らない奴が多すぎる」と、感じて欲しい。
「文学全集」なのに、読みやすくおもしろい!
家族を捨ててタヒチへ渡り、少女との淫行を重ね、キリスト教を批判し、芸術作品を書いたゴーギャン。 夫を捨てて(当時はそれだけで罪)、女性解放運動、労働組合組織という運動に身を投じる(当時はキリスト教会を超える集団をつくろうとしただけで罪)フローラ・トリスタン。彼らは孫と祖々母の関係である。 彼らに共通しているのは、「まわりの空気を読めないこと」−反社会性といった方がいいかな−。しかし、どちらもそうだが、彼らの足跡は燦然と輝く。「彼らにとって大切なものは、祖国ではなく人類だった。彼らにとって正義と自由は単にフランス人のためのものではなく、人類のためだった」 彼らの考えは当時の習慣にとらわれず、普遍的だった。だから、苦悩も大きい。 文学として思いテーマを描きながらも、場面展開がはやくストーリーもしっかりしている、質のよい映画を見ているような感覚になる。リサーチのために、タヒチにも行っているようで、タヒチ文化の描写も詳しい。人物描写もすばらしい−ときどきでる二人称がひきたててくれる−。歴史小説として読んでも質が高い(大半はフィクションらしいが)。 「文学全集」の固いイメージにとらわれず、エンターテイメント性の高い小説として軽い気持ちで読むことができました。
旅をした気分
とにかく面白かったです。 個人的にはガルシア=マルケスの「百年の孤独」より、こちらの方が断然好きです。 ゴーギャンとフローラ・トリスタンの夢見る楽園は、全く別の種類ですが、 どちらも自分の人生に情熱を持って生きていたんだと実感できました。 フローラ・トリスタンのエピソードは、歴史の重みを感じ、 ゴーギャンのタヒチやマルキーズ諸島のエピソードで、旅をしている気分も味わえました。 久々のヒットです。
「いいえ、楽園は次の角ですよ」
フローラ・トリスタン(祖母)とポール・ゴーギャン(孫)の二人の話が、交互に語られる形式で物語は進行します。語りは、時々、親しみを込めて二人に呼びかけます。 「スカートをはいた扇動者」フローラ・トリスタンと「芸術の殉教者」ポール・ゴーギャンに血の繋がりがあるとは、初めて知りました。 この物語を一言で語る言葉があります。 「ここは楽園ですか」 「いいえ、楽園は次の角ですよ」 二人は、共に「楽園」を求めて精力的な生き方をしたのでしょう。家族も捨て、身体の不調にも耐えて。 トリスタンは、人間社会に「ユートピア」を求めて、ゴーギャンは、生命力に満ちた豊かな芸術の追求の先に「楽園」を求めて、一途に生きて行きます。 この二人の純粋さに驚かされます。 普通に生きれば、二人とも豊かな生活が保障されていたでしょう。 それなのに、周りの環境や人間関係をすべて捨ててまで求めた「楽園」は、決してたどり着ける場所ではなかったものです。それを承知で求め続けた二人の壮絶な生き方に敬意を表します。



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一般人に焦点をあてた中世〜近世初頭日本論考の代表的タイトル
網野善彦による民衆史などとはまた違い、一般人のうち土地に属するもの(農民層)及び属していたが離れたもの(土地が養いきれない分量の人間・離農して非正規雇用の準軍人となったもの)をメインにいわゆる戦国期の村(ほぼイコール戦場)、城、人の流れを論考。今ではかなり定着した感のある「丸腰でない一般ピープル」史観が一般的にはまだそれほどメジャーでなかった頃の発表だったと思うが、現在では補訂新版となんだか定番になった感じ。  4部構成で、1:各地・各時期の侵略に伴う物の略奪や一般人の拉致売買・身代金取引などの戦場の現実、2:略奪・拉致の実行者層の具体像、3:戦場(ほぼイコール村、一般人の居住空間)での地元住民の姿。非難と帰還、防災保険(訴訟・免税、大名との交渉など)等々。4:戦国の終焉に伴う2の層の行方。土木建築系雇用、海外流出、都市の日雇い層などへ。(個人的には現代の非正規雇用と重なるイメージが・・)という流れ。 あくまで史学の見地なので、史料の提示とそれに基づく持論展開という形式となり、当然ながら娯楽色はありません。入門者にはもう少しライトな新書・文庫やムック系のものの方がよいと思います。タイトルは「戦場」ですが結果的にかなりテーマが拡散してしまっている点、またこれも当然というか論文の性質上やむをえないのですが意図的な飛躍と史料の孫引きで星ひとつ分。良書であることは間違いないので、一次史料まで興味の範囲にある方にはお薦めします。土地が養いきれない人口と戦争・産業と雇用の構造というテーマはさらに古い時代から現代まで、日本のみならずあらゆる地域と時代に共通のようです。
批判的知性の試金石
「こんど、家来の角右衛門が日本へ帰るので、テルマとカクセイをお土産に届けさせた。無事に着いただろうか。そのうちコカクセイ一人は娘にやってほ しい。私も戦場で十一歳の子どもを手に入れ(求め)て召し使っているが、ひどい病気もちで困っている。いずれ娘にもテルマを一人、手に入れ(求め)て贈ろう。また拾左衛門尉殿にも下女にでもできそうな子を一人、手に入れ(取り)て、次のお土産にしよう。ただ、いまは加徳カドクという島の暮らしで、食べるのがやっとだから、そのうち手の者をやって、手に入れたら(取り候わば)送りたい・・・。」本書、pp.62-63  これは、外国出張しているお父さんから家を守るお母さんへの手紙の一節である。時は今から400年前、慶長二年(1597)。差出人は、島津家家来で小身の武士、大嶋忠泰。受取人は、国元の妻(内方・宿本)。差出地は、再侵略真っただ中の朝鮮半島の戦場。  この藤木の書は衝撃的な本である。旧版は1995年に出ており、その後新たに確認できた史料を付け加えた新版がこれだ。上記は、朝鮮半島における秀吉軍の奴隷狩り戦争に関するものだが、驚くべきは、これが、日本国内の戦場における普遍的な習俗の国外持ち出しであること。  つまり、私にもあなたにもどこかの歴史的段階で、戦場の戦利品としての奴隷の血が流れている可能性もあるわけだ。美醜善悪を含め、己の歴史的来歴を知るために必ず読むべきである。この事実を冷静に受け止めることができるかどうかが、その者の批判的知性の有無をあぶり出すであろう試金石の書。
瞠目の一書
村に対する人や物の略奪(乱妨)が日常化していた戦国時代の戦場。そして略奪こそを目当てに戦いに加わった下級兵士たち。現在では既に通説化しているかもしれない戦国時代の現実であるが、門外漢の目には非常に新鮮であった。時代劇で描かれる華やかな武将たちと同時に存在した、戦争の現実がここにある。 更に驚かされたのが、東南アジアに売買された日本人奴隷(戦争での略奪被害者)と、同じく東南アジアで繰り広げられた西欧諸国の植民地戦争に投入されたという日本人傭兵の存在。きちんとした研究があるからこそ明らかになるこうした現実に、歴史の幅広さと奥深さを痛感させられる。 新版ということで、旧版の訂正や新たなエピソード挿入等があるそう。価格も手ごろなので戦国史の好きな方には是非薦めたい。


おすすめ度

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